ソニー・クラーク / Cool Struttin’

Cool Struttin'ソニー・クラークの『クール・ストラティン』はモダンジャズの人気アルバム。60年代から70年代、ぼくはジャズ喫茶で長い時間を過ごしていた。ジャズ喫茶の中でこのアルバム・ジャケットを数えきれないほど見てきた。どこのジャズ喫茶も演奏中のジャケットを客の見えるところに置いていた。一度見ただけで忘れられない素晴らしいジャケット・デザイン。ジャズ喫茶の薄暗くて煙草の煙でいっぱいの空間で見るこのアルバムは格別だった。

ジャズ喫茶では基本的に片面だけをかける。今、思うとこのアルバムはA面だけを聞いてたんだと思う。〈Cool Struttin’〉と〈Blue Minor〉、ソニー・クラークのオリジナル・ナンバーの2曲がA面。B面に比べて、アート・ファーマーとジャッキー・マクリーンの二人のフロントが、ソニー・クラーク独特のかげのあるプレイに寄り添うような思い入れたっぷりの演奏だ。

一言で言うなら、このうえなく気持ちいいサウンドだ。気持ちに寄り添い、添い寝をしてくれるようなジャズだ。だから、いつもいつもこんなジャズに安住していられないと、ぼくはフリージャズをひたすら聞いていた。でも、たまにはソニー・クラークを意識して聞いていた。郷愁に通じるような気持ちだった。

小川隆夫『ブルーノート・ジャズ』(平凡社新書)によると、ソニー・クラークはアメリカでは無名だったという。ブルーノートにかなりの数のレコーディングを残していたにも関わらず、芽がでないうちに急逝したという。31歳、麻薬が原因だった。

日本での人気を思うと、アメリカで無名というのはちょっと信じられない。でも、50年代末から60年代にかけてのブルージーな、あるいはファンキーなジャズを聞いていると、ソニー・クラークは他のプレイヤーとちょっと違うと思う。ソニー・クラークの音は日本人の演歌に通じるものがあるから日本人受けはするけど、本国のアメリカ人には受け入れられなかったんじゃないかと思う。70年代は真剣にフリージャズに没頭し、同時に当時流行っていた義理人情のやくざ映画もたくさん見ていた。そんな70年代のイメージが浮かんでくるサウンドとアルバムジャケットだ。

3、4曲目は〈Cool Struttin’〉と〈Blue Minor〉よりは乾いている。〈Sippin’ At Bells〉はマイルスの作のせいか、アート・ファーマーもジャッキー・マクリーンも最初の2曲ほどにはクラークに寄り添ってない。アグレッシブなプレイでとてもいい感じ。スタンダードナンバーの〈Deep Night〉はとてもチャーミングな曲。今回はこのアルバムを繰り返し聞いたが、一番のお気に入りはこれかな。

なお、この日の録音は『Sonny Clark Quintets』(Blue Note 1592)に2曲が収録されている。

Sonny Clark / Cool Struttin’
BLUE NOTE 1588

Art Farmaer, trumpet
Jackie McLean, alto sax
Sonny Clark, piano
Paul Chambers, bass
“Philly” Joe Jones, drums
1958年1月5日録音