人種問題がテーマの児童小説『ジェミーと走る夏』

ジェミーと走る夏 (ポプラ・ウイング・ブックス)エイドリアン・フォゲリン作 千葉茂樹訳(ポプラ社、2009年7月発行)

児童小説は好きだ。とくに少女が成長していく物語が好きだったりする。仕事で疲れて読むのに児童小説はちょうどいい。活字が少し大きめなのも読みやすい。本書の表紙イラストから、少女たちの成長物語を予想して読み始めた。

成長物語であることは間違いないが、背景の人種問題におどろきながらも、いろいろと知識を得られた。低学歴のプワーホワイトの家の隣に、大卒看護士が母親の一家が越してくる。プワーホワイトの父親の黒人に対する偏見。一方、看護士の母親は学業を続ける過程で味わった黒人差別を決して忘れない。一般的に、両者は反目こそすれ歩み寄ることは難しい。

両家の和解のきっかけを作るのが、お互いの家庭の12歳の少女二人。黒人少女の祖母の話は、人種問題についての教科書的な描写風だ。しかし、アラバマ州でおきた有名なローザ・パークス事件のことを二人の少女に話するとこなんか、祖母もまた事件に触発された実行するという当事者だったわけで、読む方にも重く伝わる。

黒人差別を背景に、隣人同士の友情が徐々に芽生える物語で、感動的。ちなみに、二人は夏休みをかけてシャーロット・ブロンテの長編小説『ジェーン・エア』を読み、恋愛を考える。読了してこの作者の他の作品を読みたくて学校の図書館に行くが、シャーロットの作品は他にない。そしてエミリー・ブロンテを知る。二人が『嵐が丘』を読み始めることを暗示させるシーンは感動的だ。

最後は、走るレースに出場するわけだが、この結末はもっと感動的。
本書を読んだら、John Coltrane 「Alabama」を聞きたくなった。