文字は語る-デザインの前に耳を傾けるべきこと

文字は語る?デザインの前に耳を傾けるべきこと (DTPWORLD ARCHIVES)本書の主な内容は、「文字」の使い手からと作り手からの執筆で、それぞれ9編からなる。そのほかに文字に関するコラムとエッセイ、そしえ小宮山博史氏のこの本の中では長めの論評が2編からなる。これらは、月刊DTPWORLD の「文字」に関する記事を中心に再編集した本だ。150ページほどの余白も多い本なので、素早く読めるが、それぞれの執筆者の文字への想いが伝わってくる。

本書に登場した市販書体サイトを調べたので書いておく。これらのサイトの書体ページ眺め、使う側のグラフィク・デザイナーや作る側のタイプデザイナーの執筆を読むと、文字に対して、より含蓄が深くなる。
タカオカデザインワークス/丸明オールド
エイワン/ZENオールド明朝
大日本印/秀英体
モリサワ
イワタ/イワタUDフォント
字游工房/游ゴシック

小宮山博史氏の「書体の選択に必要なこと」から得るものがあった。それは本文用明朝体の「良い書体」の条件を論じたものだ。その中で、「錯視」について書かれていた。漢字を構成するラインの場合、垂直に見える縦線も実際はどちらかに傾いているという。傾くことで垂直に見える。この傾ける度合いを「錯視の調整」と言っているが、これは先人たちが長い経験によって獲得し、伝承してきた技法だという。

写植からデジタルフォントに切り替わるときに、伝承が一時的に途絶えたのか、 錯視の調整を施していない書体が多くあったようだと記している。あの頃はよく知っている。ぼくは錯視の調整までは目が行かなかったが、組版もかなりひどいものだった。

その頃ぼくは写植業を個人でやっていたが、Macを手に入れて版下の仕事でも使い始めていた。フォントの種類が少なくて、写植で印字したものを “Illustrator” でトレースしていた。ぼくはタイポデザインの専門教育を受けたことはないで、そのトレースを通じて、タイポデザインの奥深さを感じたものだった。垂直だと思っていた縦線が傾いていたり、左右対称だと見ていたハネの部分がそうではなかったりと、新しい発見ばかりだった。そんなことが20年ばかり経った今、小宮山博史氏の執筆で裏付けられた。