欧文書体―その背景と使い方

欧文書体―その背景と使い方 (新デザインガイド)小林章 著(美術出版社、2005年7月発行)

本書には続編『欧文書体2』があって、そのまえがきには、
「私の一冊目の本『欧文書体 その背景と使い方』は、学生さんや若いデザイナーの方々向けの入門書として書きました。欧文組版の基礎的な組版ルールなども紹介したところ、意外と中堅クラスやベテランのデザイナーにも評判がよかったようです。」

と書いてある。その一冊目の本書のあとがきにはこのようにも書いている。
「『タイポグラフィ』は学者のためのものではなく、『タイポグラフィ』などという言葉さえ聞いたことのないお年寄りや子供たちも含めたいろんな読者のものだと思っているからです。」

一冊目のあとがきと二冊目のまえがきを読み比べると、生活の中のタイポグラフィを意図して書いたものの、デザイナー向けの本という位置づけに変わったように見える。たしかに、本書はどう見ても、デザイナーのための本だと思う。ぼくなども、何年経っても欧文を使う場合は気を使うので、本書は手放せない。

しかし、著者の最初の意図はとても大事なことだとぼくは感じている。パソコンの普及で、タイポグラフィという言葉を知らない人がタイポグラフィを操る環境が整ってしまった。日本人が欧文書体を扱うと、無知からささいな間違いを犯す場合が多い。それが、下町の町工場の看板だったら、ほほえましいナ~だが、おしゃれな街のおしゃれな催しのディスプレイだったら、非常にまずいことになる。制作した本人は気づかなくても、多分、少なからずの人が気づき、そして誰も指摘はしない。

スペーシングなど、デザイン感覚にかかわることもあるが、それ以前の欧文組版の約束事を知るのは難しいことではない。本書にはそんな知識が非常に分かりやすく書いてある。著者の最初の意図通りにデザイナー以外の多くの人が手にする本になってほしいと思う。