眠りの旅たちに携える絵本 And If the Moon Could Talk

本書の絵は人気の高い「リサとガスパール」シリーズも手がけているゲオルグ・ハンスレーベンです。絵のタッチはそのLisaシリーズと同じ、しかし本はずっと大きい。ここには就寝前の女の子のひとときが描かれているのですがストーリーはない。文も1ページに1行程度で親子でイメージをふくらませるヒントとして絵が提示されている、といった感じでしょうか。

絵本の中では世界の夜の風景が展開する。小鳥やライオンの親子の就寝前もある。そして女の子の夢で終わりますが、それはラクダの背に揺られる小動物たちの愉快な旅です。その小動物たちというのは、少女の隣で寝ているぬいぐるみのウサギだったり、部屋のあいこちに置かれた動物たちのぬいぐるみです。就寝は昼から夜への旅立ちだと思う。本書を携えて旅立てる子はほんとうに幸せだと思う。

And If the Moon Could Talk
Text copyright (c) 1998 by Kate Banks
Picture copyright (c) 1998 by Georg Hallensleben

《ゲオルグ・ハレンスレーベンの絵本》
□青い大きな家 / ケイト・バンクス作、ゲオルグ・ハレンスレーベン絵の絵本
□幼い少女の見る夜の風景をアン・グットマンとゲオルグ・ハンスレーベンが描いた絵本/夜になると
□アフリカへ誘うゲオルグ・ハレンスレーベンの絵本/BABOON

笑える絵本 Click Clack Moo: Cows That Type

躍動感にあふれた大胆な絵。で、内容はムチャクチャにふざけた話。笑える! ある日、牧場主の耳に牛小屋からタイプライターの音が聞こえる。信じられないなー、と思いつつ行ってみると、牛小屋の前にタイプされた紙が一枚。寒いんで、電気毛布をちょうだい、という牧場主に宛てたメッセージだ。最初は相手にしなかった牧場主も最後は折れる。それを見ていたニワトリも要求だ。ついには、家畜たちへの牧場主のメッセンジャーをやっていたアヒルがとんでもない要求をする。

このお話には、つづきがあと2冊出ている。しかし、この最初のが一番笑える。

Click Clack Moo: Cows That Type
Text copyright (c) 2000 by Doreen Cronin
Illustration copyright (c) 2000 by Betsy Lewin

すばらしい構図とカラーの絵本 Yesterday I Had the BLUES

黒人少年が主人公でその家族の登場する絵本。ぼくは昨日、BLUESだった。今日は greens という具合。父さんは駐車違反で grays ・・・と家族全員が登場する。ストーリーはない。絵がすばらしい。とても荒っぽい筆遣いなのに、人物の表情が生き生きしている。カラーの配色が心地よくで、構図はムチャ大胆で躍動感いっぱい。

イラストレーションのグレゴリー・クリスティーは翻訳された絵本で「とどまることなく-奴隷解放につくした黒人女性ソジャーナ・トゥルース」(国土社2002年発行)がある。こちらも内容は固いながら、絵は大胆だった。

Yesterday I Had the BLUES
Text copyright (c) 2003 by Jeron Ashford Frame
Illustrations copyright (c) 2003 by R. Gregory Christie

Robert McCloskey(ロバート・マックロスキー)/ Time of Wonder

「One Morning in Maine」から5年後の1957年に出版された絵本。Sal は成長して少女になっている。妹のJaneも大きくなり、いまでは二人でヨットを操っている。「Blueberries for Sal」と「One Morning in Maine」がモノクロの線画だったが、本書で大きく変わってカラーになっている。あの細部にこだわった線はなくなった。大胆な筆のタッチに変わったが、線画では表現できなかった霧とか天気の移ろいといった形のないものが描かれている。

ここでは、島での夏の日常が描かれている。夏の終わり、嵐が島を襲い、そして秋を前にして島を去るまでの話だ。視界をさえぎる霧とか、嵐の通り過ぎ去るのを待つ夜とか、ページの向こうに不安を演出している。嵐の去った翌朝、姉妹は倒れた木の根元に先住民族の貝塚をみつける。二人は白人が来るよりもずっと昔、インディアンの子どもたちが立っていた同じ場所にいることを意識する。何かが変わろうとしている。60年代、若い女性に成長した Sal はどんな生活をおくることになるのだろう。
《関連記事=マックロスキーの他の絵本》
Robert McCloskey(ロバート・マックロスキー)/ Blueberries for Sal
Robert McCloskey(ロバート・マックロスキー)/ One Morning in Maine

Robert McCloskey(ロバート・マックロスキー)/ One Morning in Maine

「Blueberries for Sal」から4年後の1952年の絵本。幼かったSalも成長し、今朝も妹のJaneのお世話をしている。そして、自分の歯が抜けていることに気づいて大騒ぎ。母親の説明から、乳歯と永久歯をのことを知り。わたしは a big girl なの、と外で出会う、ワシや水鳥、オットセイ、カモメなんかに声をかけるが、相手にしてくれない。さすがに父親はアサリ採りに忙しい手をやすめて、ふんふん、と口の中を覗き込んでくれた。

メイン州の自然の中で暮らす一家のある日の長女の成長の一日を題材にした、なんともいえない暖かい絵本。絵はスミ一色だが、人物と自然の描写がとてもすばらしい。「Blueberries for Sal」の絵もよかったが、本書には絵にダイナミックが動きを感じる。大判の見開きいっぱいに広がる絵だが、自然や住まい、雑貨店など、人物から目をはなして、まわりに目を凝らすといつまでも見飽きない、樹木や小物が散りばめられている。50年代アメリカの陽のあたる文化にやすらぎを感じる。

《関連記事=マックロスキーの他の絵本》
Robert McCloskey(ロバート・マックロスキー)/ Blueberries for Sal
Robert McCloskey(ロバート・マックロスキー)/ Time of Wonder

シャーロット・ヴォークが絵の絵本 エルシー・ピドック、ゆめでなわとびをする

ぼくが絵本を知るのは、デザイン関係の本を探して洋書売り場をうろつくようになってからだ。もう20年以上も前の話だけどね。幼少に絵本を親しむ環境はなかった。だから最初、ストーリーはどうでもよくて、気に入った絵であれば読めもしない原書を買っていた。イソップとかマザーグースのヴォウクは、ぼくが絵本を見る習慣のきっかけとなった作家の一人だ。細くて手早い手書きのラインに、薄い水彩絵の具をささっと塗ってあるのがヴォーグの絵。それは見ていて、とてもリラックスする絵なんだ。

ヴォーグには全くの幼児向け(でも、ぼくのお気に入り)の絵本もあるが、本書はちょっと文章の多い絵本だ。内容はなわとびの上手な少女の話。彼女の技は年ごとに評判になり、ついには妖精たちの耳にも入るようになる。そして、妖精からなわとびの指導を受けることになる。この物語の感動はそれから100年近く過ぎたときにやってくる。妖精と人間の出会う話はいつでもワクワクしてしまう。おまけにそれがシャーロット・ヴォークの絵だからたまらない。

文:エリナー・ファージョン(Eleanor Farjeon)
絵:シャーロット・ヴォーク( (c)2000 Charlotte Voake)
発行所:2004年 岩波書店
原題:ELSIE PIDDOCK SKIPS IN HER SLEEP

ウィリアム・スタイグ(William Steig)/ロバのシルベスターとまほうのこいし

スタイグって、面白いよね~。ぼくは大好きでスタイグの作品はかなり読んでいる。でも、たくさん出ているのですべてを読んでるわけじゃない。今日は久しぶりで、まだ読んでなかったものにあたった。スタイグには全くのナンセンスなものと、親子関係ものがある。これは親子関係もの。

シルベスターはロバの一家の一人息子。その息子がある日突然帰ってこない。秋になり、冬になり、春になって、傷心の両親は近くの丘にピクニックに行く。そこで、劇的に子供と再会というわけだ。ま、スタイグの親子ものはいつもそうなんだ。この話の展開は「くぎになったソロモン」とそっくり。ソロモンの方はナンセンス度は高いかな、その分、本書より面白いかも。

1975年の作品
原題:SYLVESTER AND THE MAGIC PEBBLE
著者:ウィリアム・スタイグ(William Steig)
翻訳:せた ていじ
発行所:評論社

《ウィリアム・スタイグの絵本》
ウィリアム・スタイグらしいおかしな絵本/Pete’s A Pizza
ウィリアム・スタイグの夫婦愛の絵本/Caleb & Kate
ウィリアム・スタイグの変身する絵本/Solomon the Rusty Nail
ウィリアム・スタイグの文句なしの面白い絵本/Farmer Palmer’s Wagon Ride

Robert McCloskey(ロバート・マックロスキー)/ Blueberries for Sal

ちょっと、ハラハラ、ドキドキさせるけど、ユーモアのある絵本。お母さんは幼い娘の Sal を連れて、ブルーベリー摘みに小高い丘にやってきた。一方、丘の向こう側では、やはり小熊を連れた母熊がブルーベリーを食べに来ている。で、ハラハラ、ドキドキと笑いを誘うシーンとなるわけ。

絵は横長の本の見開きいっぱいに広い風景が効果的に描かれている。濃紺の一色だが、丹念に描かれている。見返しのキッチンの絵は、50年代アメリカ文化を感じさせて、見飽きない。

Copyright Robert McCloskey, 1948
Copyright (c) renewed Robert McCloskey, 1976

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Robert McCloskey(ロバート・マックロスキー)/ One Morning in Maine
Robert McCloskey(ロバート・マックロスキー)/ Time of Wonder

深い余韻を残す絵本 バーバラ・クーニー/みずうみにきえた村

バーバラ・クーニーの作品にはアメリカ合衆国の自然とそこに暮らす人々を描くものが多い。本書もその一冊で、小さな村が大都会のボストンに水を供給するためのダム建設で水没する話。

主人公の女の子の部屋の窓の外を大きなヤナギの長い枝のあいだを風が通り過ぎている夏のある朝から物語が始まる。釣り、ピクニック、ホタル狩り・・・、きびしい冬の村の生活。ある年、町から人がやってきて、ダム建設の話が持ち上がります。

お墓の引っ越し、建物の取り壊し、人々の引っ越し。そしてダムが完成し、7年の歳月をかけて、少女の育った村を水底に沈めます。ある夏の日、すっかり女性に成長して、父親と二人でダム湖にボートをこぎ出します。そして湖底を眺め、そこに夏の日々をかいま見るのです。

1992年の作品です。
文:ジェーン・ヨーレン
絵:バーバラ・クーニー
訳:掛川恭子
発行:1996.10.25 ほるぷ出版

《バーバラ・クーニーの絵本》
旅たちの絵本 バーバラ・クーニー/Hattie and the Wild Waves(おおきななみ)
マイケル・ビダードとバーバラ・クーニーによるエミリー・ディキンソンの絵本/Emily